2007年4月19日に、肝疾患に係る地域の医療水準の向上を図る観点から肝疾患診療体制の整備の一環として、各都道府県に肝疾患診療連携拠点病院が選定されることとなり、広島県からは広島大学病院が選定されました。肝疾患診療連携拠点病院の役割として、肝疾患に係る一般的な医療情報の提供、肝疾患に関する相談支援があり、これらの役割を担う目的で、2007年12月6日に肝疾患相談室が開設されました。
肝疾患は、肝炎ウイルスをはじめとしたウイルス感染に伴うウイルス性のほか、自己免疫性、アルコール性、脂肪性、薬剤性、代謝性など原因は様々です。肝臓は沈黙の臓器と言われ、肝疾患患者さんの多くは無症状であり、気付かないうちに慢性肝炎を発症し、症状が出現した時には肝硬変、肝がんへと進行していることも少なくありません。そのため、日本肝臓学会では、無症状のうちに(肝疾患が進行しないうちに)診断し、適切な治療に結び付けられるよう2023年6月に奈良宣言2023を提唱しました。
一般的な健康診断でも肝機能検査として測定されるALT値を指標とし、ALT値が30 U/Lより高値であった場合、かかりつけ医等で原因を検索し、必要があれば、消化器内科等の専門診療科での精密検査に繋げることを目的としており、かかりつけ医と専門医の診療連携が重要となります。
肝疾患相談室では、このようにして受診される患者さんが不安なく、円滑に診察が受けられるよう地域の専門医療機関と連携の強化や肝疾患診療のサポートを行っております。肝疾患の病態や治療は、肝疾患の病因によっても様々ですので、肝疾患相談室では、患者さんにご自身の疾患をご理解頂けるよう肝疾患に係る一般的な医療情報を提供し、患者さんやそのご家族が安心して治療を受けられるよう相談支援を行っております。また、患者さんや地域住民の方を対象とした市民公開講座などを開催し、肝疾患に関する啓発活動にも取り組んでおります。
近年、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス感染者への治療は大きな進歩を遂げてきました。
B型肝炎ウイルス感染者では、抗ウイルス療法によりB型肝炎ウイルスの増殖を強力に抑制することで、肝臓の線維化改善や肝臓がん発症の抑制が期待できますし、C型肝炎ウイルス感染者では、抗ウイルス療法により95%以上の患者さんでウイルス排除が達成できるようになっております。しかしながら、現在も肝炎ウイルス感染に気付かず、生活されている方もたくさんおられ、肝硬変や肝臓がん発症後に初めて病院を受診される方も少なくありません。そのため、肝疾患相談室のもう一つの役割として、肝炎ウイルス感染者の拾い上げがあります。
この取り組みは、医師だけでは十分な成果を上げることはできませんので、歯科医師・看護師・肝炎医療コーディネーターなど様々な職種で活躍されている医療従事者、そして行政の方々と協力して、積極的に患者さんを拾い上げ、そして治療へと結び付けていきたいと考えております。
広島大学病院 肝疾患相談室の活動により、患者さんの肝疾患克服ならびに広島県の肝疾患診療の向上に貢献していきたいと考えております。今後とも宜しくお願い申し上げます。